マンションの大規模修繕にかかる費用相場|安く抑えるポイントまで解説!

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目次

マンションの大規模修繕は、住民の安心・安全な暮らしを守るために欠かせない修繕工事です。

「具体的にどれくらいの費用がかかるのか」「積立金が十分に確保されているのか」など、工事に関する具体的な情報を把握しておく必要があります。

大規模修繕は避けて通れない重要な工事ですが、その費用は決して安くありません。

さらに、2回目・3回目と回数を重ねるごとに、高額になる傾向があることをご存知でしょうか?

本記事では、大規模修繕にかかる費用の相場や、費用を安く抑えるポイントを詳しく解説します。

適切な知識と準備があれば、大規模修繕の費用問題も怖くありません。

マンションの資産価値を守り、快適な居住環境を維持するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

1.大規模修繕とは?

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大規模修繕とは、建物や設備の経年劣化に伴い実施する大規模な計画修繕工事のことです。

通常12〜15年ごとに行われ、外壁・屋上・バルコニー・給排水管などの建物の主要構造部を主に修繕します。

大規模修繕の目的は、マンションの居住環境や資産価値を良好に維持することです。

日常的なメンテナンスとは異なり、より広範囲で大規模な工事となるため、多額の費用が必要になります。

そのため、管理組合は長期的な計画を立て、資金を積み立てておきましょう。

注意すべき点は、大規模修繕が一度きりの修繕工事ではないことです。

マンションが存続する限り、定期的に実施する必要があります。

回数を重ねるごとに工事の範囲が広がり、費用も増加する傾向にあることを念頭においておきましょう。

2.大規模修繕にかかる費用相場

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大規模修繕の費用は、マンションの特性や工事内容によって大きく変わります。

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の一般的な費用相場は1戸あたり100〜125万円程度です。

しかし、大規模修繕にかかる費用は、下表のとおりマンションの規模によって異なります。

規模

戸数

概算費用

小規模

20戸程度

2,000万円〜

中規模

50〜100戸程度

4,000万円〜

大規模

100戸以上

7,000万円〜

参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

大規模マンションや高層タワーマンションでは、1億円を超えることもあります。

そのほか、工事の内容や範囲によっても、大規模修繕工事の費用は大きく異なります。

専門家の助言を得ながら、マンションに適した修繕計画を立て、計画に基づいた費用の見積もりを受けましょう。

3.大規模修繕の費用は2回目・3回目の方が高いって本当?

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大規模修繕の費用は、2回目・3回目と回数を重ねるごとに増加する傾向があります。

1回目の修繕では劣化が比較的少なく、費用相場は一戸あたり「75万円〜100万円」です。

一方で2回目は、一戸あたり「100万円〜125万円」が目安となります。

3回目になると建物は築30年以上経過しているため、建物の本体や給排水管、サッシの更新などでさらに費用が増加します。

上記のように、大規模修繕の費用は回数を重ねるごとに増加する傾向にあります。

そのため、2回目以降の大規模修繕も見据えて、計画的に修繕積立金を確保しておきましょう。

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4.大規模修繕の費用を積み立てる方法

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大規模修繕の費用を確保するためには、修繕のための資金の計画的な積立が不可欠です。

一般的に、マンションの区分所有者が毎月支払う「修繕積立金」が充てられます。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、修繕積立金の目安は専有面積1㎡あたり平均252円〜335円/です。

修繕積立金を積み立てる主な方法には、以下の3つがあります。

  1. 均等積立方式
  2. 段階増額積立方式
  3. 修繕積立基金

詳しく見ていきましょう。

(1)均等積立方式

均等積立方式は、長期修繕計画に基づく修繕費用を、計画期間内で均等に積み立てる方法です。

月々の積立金額が一定なため、区分所有者の家計管理がしやすく、安定した資金確保が可能になります

管理組合にとっても、将来の修繕費用に向けて着実に資金を積み立てられるため、計画的な修繕工事の実施が可能です。

ただし、新築時から比較的高額な積立金が必要となるため、区分所有者にとっては初期負担が大きくなります。

(2)段階増額積立方式

段階増額積立方式は、修繕積立金を段階的に増額していく方法です。

新築時は積立額が比較的安いため、区分所有者の初期負担が軽減されます

しかし、築年数が進むにつれて積立金が増え、特に高齢化した区分所有者は負担が大きくなるのがデメリットとなります。

また、増額時に管理組合での合意が難しい場合、必要な修繕費が不足するリスクがあります。

(3)修繕積立基金

修繕積立基金は、新築マンションの購入者が購入時に支払う修繕費用です。

大規模修繕工事に必要な資金の一部を確保できます

ただし、修繕積立基金の設定額が低すぎると、修繕費が不足してしまうリスクも。

そのため、基金が十分かどうか定期的に確認し、不足が生じないように準備することが重要です。

5.大規模修繕にかかる費用を安く抑えるポイント

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大規模修繕は、マンションの資産価値を維持するために欠かせませんが、多額の費用がかかるのも事実です。

しかし、適切な方法を用いることで、費用を抑えつつ質の高い修繕を実現できます。

以下で、費用を安く抑えるポイントを解説します。

  1. 助成金や補助金を活用する
  2. 複数社から見積もりを取る
  3. 管理会社に任せっきりにしない
  4. 工事内容を見直す
  5. 定期的にメンテナンスする

詳しく見ていきましょう。

ポイント1.助成金や補助金を活用する

大規模修繕の費用を安く抑える方法の1つが、助成金や補助金の活用です。

国や自治体では、マンションのバリアフリー化や防音工事、エネルギー効率の改善などを支援する助成制度を設けている場合があります。

支援制度を利用することで、例えば下表の工事の費用の一部を補助してもらえるでしょう。

工事内容

補助金制度

省エネ改修やバリアフリー化を含む工事

国の補助金制度

耐震改修や外壁改修

地方自治体独自の助成金制度

ただし、この支援制度は地域や条件によって大きく異なります。

また、申請期限や必要書類なども細かく定められていることが多いため、事前に自治体の担当窓口に確認し、詳細な情報を入手しておきましょう

ポイント2.複数社から見積もりを取る

大規模修繕の費用を抑えるためには、複数の施工業者から見積もりを取ることもポイントです。

工事価格の相場を把握し、予算に合った業者を選定できます。

また、複数の見積もりを比較することで、各業者の工事内容や対応も確認でき、より良い選択が可能です。

ただし、極端に安い見積もりを提示する業者には注意しましょう。

極端に工事費用が安い業者は、手抜き工事や低品質な材料の使用などのリスクがあります。

結果的に早期の再修繕が必要になるなど、かえって高コストになる可能性も。

見積もりを比較する際は単に金額だけでなく、工事の内容や使用する材料の品質、アフターサービスの内容も考慮しましょう。

ポイント3.管理会社に任せっきりにしない

大規模修繕工事を進めるうえで、管理会社にすべてを任せっきりにしないことが、費用を抑える重要なポイントです。

管理会社が施工業者を選定する際、管理会社の中間マージンが発生することがあります。

中間マージンとは、管理会社の仲介手数料のことであり、結果的に修繕費用が高くなる原因です。また相場より工事費が高い施工業者を推奨されることもあります。

修繕費用の高騰を防ぐためには、業者の選定や費用の内訳に対して管理組合からも意見を伝えるようにしましょう。

また、管理組合側も見積書の内容を確認し、不要な工事を省くなど適切な判断をすることで、費用を削減できます。

ポイント4.工事内容を見直す

大規模修繕工事の費用削減には、工事の内容を見直すことも有効です。

特に、足場設置にかかる費用を削減できる「無足場工法」などの代替工法によるコスト削減も検討の余地があります。

また、建物の安全性や耐用年数に直結する部分を優先し、緊急性の低い工事は次回の大規模修繕に回すなどの柔軟な対応も考えられます。

施工業者としっかり相談し、無理のない範囲で工事内容を調整することで、費用の負担を軽減できます。

ポイント5.定期的にメンテナンスする

大規模修繕工事の費用を抑えるには、日常的な点検と適切なメンテナンスが重要です。

普段から建物の状態を確認し、外壁や防水材、配管の点検・補修を行うことで、劣化を早期に発見し、建物の劣化スピードを低減できます。

メンテナンスを怠ると劣化が進み、結果的に大規模修繕の修繕箇所が増えたり工期が長くなったりする可能性もあります。

定期的な日常のメンテナンスを怠ると、結果的に修繕費が大幅に増加するおそれがあるため、小規模な修繕を定期的に行い、建物の寿命を延ばすことを心がけましょう。

6.大規模修繕費用が足りない場合の対処法

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大規模修繕工事は、マンションの価値を維持し、快適な居住環境を保つために欠かせません。

しかし、いざ工事を計画すると、費用が足りないという事態に直面する組合も多いようです。

大規模修繕費用が足りない場合は、以下のような対処法があります。

  1. 修繕積立金を値上げする
  2. 一時金を徴収する
  3. 金融機関から借入れる
  4. 修繕工事を延期する

順番に解説します。

(1)修繕積立金を値上げする

修繕積立金の増額は、大規模修繕にかかる費用の不足を補う効果的な手段の1つです。

毎月の積立金を引き上げることで、必要な資金を確保します。

修繕積立金の値上げには総会での決議が必要ですが、一時的な多額の費用負担を避けながら資金を確保できるのがメリット。

一方で、区分所有者は急な高額の支払いを免れるものの、毎月の支出が増えるため、負担が長期的に続くことがデメリットです。

値上げに際しては区分所有者の理解を得るために、費用不足の理由や今後の計画について丁寧な説明が求められます。

(2)一時金を徴収する

次に、一時金を徴収する方法です。

一時金の徴収は総会で決議し、居住者から不足額に応じてまとまった金額を徴収します。

メリットは、短期間で必要な資金を確保できることです。

しかし、区分所有者にとって大きな負担となるため、反対意見が出やすくなります。

一時金をスムーズに徴収するためには、分割払いの提案や徴収期間を長く設けるなど、柔軟な対応が必要です。

(3)金融機関から借入れる

金融機関からの借入れは、大規模修繕費用の不足分を迅速に確保するための選択肢の1つです。

借入れは、区分所有者からの修繕費補填が難しい場合に検討されることが多く、総会での決議が必要となります。

金融機関からの借入は、短期間で必要な資金を確保できることがメリットです。

特に大規模修繕までの期間が短い場合、効果的な方法と言えるでしょう。

また、区分所有者に対して一時的には大きな負担をかけずに済むため、一時金の徴収よりも同意を得やすい可能性があります。

ただし、借入金には利息が発生するため、返済総額は修繕積立金の値上げや一時金の徴収と比べて高くなる可能性もあります。

返済方法や返済計画もよく確認し、慎重にメリット・デメリットを検討する必要があります。

(4)修繕工事を延期する

修繕費が不足している場合、工事の延期を検討することも対策の一つです。

費用が足りないために工事費を値切ると、安価な資材を使われたり手抜き工事が行われたりする可能性があります。

しかし、工事の延期は修繕箇所の劣化が進行し、建物全体に悪影響をおよぼすリスクが高まることがデメリットです。

特に、防水や構造に関わる重要な修繕を延期すると、将来的により大規模な工事が必要となり、結果的に負担するコストが増大する可能性が高まります。

工事を延期する前に、修繕費の確保や他の対策も十分に検討しましょう。

7.マンションの大規模修繕にかかる費用に差が出る要因

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マンションの大規模修繕においては、建物の規模や劣化状態などが費用に大きく差が出る要因となります。

ここでは、大規模修繕にかかる費用に差が出る要因を紹介します。

  1. マンションの規模、形状
  2. マンションの劣化状態
  3. 塗装箇所の数
  4. 塗料のグレード

詳しく見ていきましょう。

要因1.マンションの規模、形状

マンションの規模は、大規模修繕の費用に大きな影響を与えます。

一般的に、建物が大きいほど費用も高くなる傾向がありますが、主な理由は以下の2点です。

  • 足場の設置範囲が広がる
  • 塗装面積の増加
  • マンションの形状

まず、足場の設置範囲が広がることです。

大規模修繕に欠かせない足場の設置は、建物が大きいほど広範囲になり、費用が増加します。

次に塗装面積の増加です。

大型のマンションほど外壁面積が広くなるため、使用する塗料の量が増え、作業時間も長くなります。

最後に、マンションの形状です。

複雑なデザインや特殊な構造を持つ建物では塗装作業が困難になり、特別な技術や機材が必要となる結果、費用も上昇します。

マンションの規模や形状は、大規模修繕の費用を左右する大きな要因です。

管理組合においては、ご自身のマンションの特徴を把握し、それに応じた予算計画を立てることをおすすめします。

要因2.マンションの劣化状態

マンションの劣化状態も、大規模修繕の費用に大きく影響します。

劣化が進むほど修繕費用は高くなり、より多くの補修作業や材料が必要になるためです。

劣化症状に応じた主な修繕メニューには、下表のようなものがあります。

修繕メニュー

費用(円)

ひび割れ大Vカット補修

35,000/式~

※ひび割れの大きさにより費用に差が出る

塩ビシート防水

10,000~13,000/㎡

長尺シート張り替え

15,000~/㎡

廊下の防塵塗装

3,000~/㎡

サビ止め塗装

2,000~/㎡

マンションの状態によって、必要な修繕メニューは変わります。

例えば、ひび割れが多いマンションではVカット補修の費用が増加し、防水性能が低下している場合は、塩ビシート防水や長尺シート張り替えが必要です。

また、劣化が進行するとより大規模な修繕が必要になり、費用が膨らむ可能性があります。

定期的な点検と適切なメンテナンスで劣化の進行を抑え、修繕費用を抑制しましょう。

要因3.塗装箇所の数

大規模修繕における塗装箇所の数は、総費用に大きな影響を与えます。

塗装箇所が多ければ、その分塗料の量や作業時間、人員が増えるためです。

予算が限られている場合、すべての箇所を同時に修繕するのが難しいこともあるため、必要な箇所を優先的に施工しましょう。

例えば、北側の外壁が特に劣化している場合、その部分を優先して塗装するといった方法です。

しかし、塗装箇所を減らすことで一時的に費用を抑えられても、長期的には建物全体の劣化が進行します。

将来的により大きな修繕費用がかかるリスクもあるため、計画的な修繕が重要です。

要因4.塗料のグレード

大規模修繕において、塗料のグレードも費用に大きな影響を与える要因です。

塗料にはさまざまな種類があり、それぞれ耐久性や性能、1平方メートルあたりの単価などが異なります。

塗料の種類(耐用年数)

単価(円/㎡)

ウレタン塗料(7〜10年)

1,500~2,500

シリコン塗料(7〜15年)

1,800~3,500

ラジカル塗料(12〜16年)

2,200~4,000

フッ素塗料(15〜20年)

3,000~5,000

無機塗料(20〜25年)

4,500~5,500

フッ素塗料や無機塗料は高価ですが耐久性は高く、長期的にみると塗り替え頻度が少なくて済むため、総合的なコストを抑えられるでしょう。

一方、ウレタン塗料は比較的安価ですが、耐久性はやや劣るため、塗り替えの頻度が高くなる傾向があります。

塗料の選択は初期費用だけでなく、長期的な維持管理費用も考慮して決定することが重要です。

マンションの立地環境や建物の特性、管理組合の予算などを総合的に判断し、最適な塗料を選びましょう。

8.大規模修繕にかかる費用を計画的に準備しておきましょう

マンションの大規模修繕は、適切な計画と費用の管理が重要です。

修繕費用が不足している場合、修繕積立金の値上げや一時金の徴収、金融機関からの借り入れなど、さまざまな対処法があります。

また、工事内容の見直しや助成金の活用、定期的なメンテナンスを行うことで、費用を抑えることも可能です。

管理組合は適切な対応と住民の理解を得て、大規模修繕を計画的に進め、マンションの長寿命化と資産価値の維持に努めましょう。

万が一、資金が不足した場合の対処法もありますが、そうならないよう日ごろから計画的な準備を心がけることが大切です。

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