マンションの大規模修繕にかかる期間|修繕の流れや注意点まで解説!

マンションの大規模修繕は、管理組合の役員にとって重要な課題です。
大規模修繕をスムーズに進めるためにも、どれくらいの期間を要するのかをあらかじめ把握しておく必要があります。
一般的には、3か月から1年ほどの期間を要しますが、建物の規模や修繕内容によって異なります。
修繕にかかる期間は、住民の生活にも大きく影響するため、しっかりとしたスケジュール管理が必要です。
本記事では、マンションの規模別で大規模修繕にかかる期間を解説します。
これから大規模修繕に取り組む管理組合の方は、スムーズな修繕計画の検討にお役立てください。
1.大規模修繕とは?
マンションの大規模修繕とは、建物や設備の経年劣化に伴い実施する、大規模な計画修繕工事のことです。
外壁・屋上・バルコニー・給排水管などの建物の主要構造部を、主に修繕します。
大規模修繕の目的は、マンションの居住環境や資産価値を良好に維持することです。
日常的なメンテナンスとは異なり、大規模修繕は建物全体を対象とした大掛かりな工事になります。
大規模修繕は、建物の耐久性向上と住民の快適な生活環境維持に欠かせません。
適切なタイミングでの実施は、予期せぬ設備の故障や事故の防止につながり、長期的には修繕費用の削減にも寄与します。
2.【規模別】大規模修繕にかかる期間
大規模修繕工事の期間は、マンションの規模によって異なるため、適切な計画を立てることが重要です。
ここでは、マンションの規模別に準備期間と工期について整理していきます。
(1)小規模マンション
小規模マンションの準備期間と工期は、以下のとおりです。
それぞれ、見ていきましょう。
①準備期間(計画を含む)
小規模マンションの準備期間は6か月~1年が目安です。
小規模マンションでは住民同士の関係が近いため、事前に住民の意見を吸い上げ、意見調整を行うことが求められます。
こうした準備が、スムーズな工事進行に大きく寄与します。
②工期
工事期間は3〜4か月程度が一般的です。
計画的な準備を行うことで、工期短縮が期待でき、住民の負担軽減につながります。
(2)中規模マンション
中規模マンションの準備期間と工期は、以下のとおりです。
それぞれ、見ていきましょう。
① 準備期間(計画を含む)
中規模マンションの準備期間は1年~1年半が目安です。
建物の規模が大きくなるにつれて、共用設備や外壁面積が増加し、工事内容が複雑化します。
そのため、早い段階から専門家の関与を得て、計画の精度を高めることが推奨されます。
②工期
工事期間は4~6か月が目安です。
建物構造や共用設備の状態によって工期が延びる可能性もあるため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。
(3)大規模マンション
大規模マンションの準備期間と工期は、以下のとおりです。
それぞれ、見ていきましょう。
① 準備期間(計画を含む)
大規模マンションの準備期間は1年半~2年が目安になります。
住民数が多く、意見調整や合意形成に時間がかかるため、管理組合と専門家が連携して計画を立てることが重要です。
特に高層マンションでは、広範囲で複雑な工事内容になることが多いため、綿密な準備が求められます。
② 工期
工事期間は6か月~1年が一般的ですが、特に規模の大きい高層マンションの場合は1年以上、場合によっては2年以上かかることもあります。
計画に沿って進行管理を徹底することで、工期を守りつつ、住民の満足度を高めることが可能です。
3.大規模修繕を行う周期・タイミングの目安
マンションの大規模修繕工事は、通常12〜15年周期が目安とされています。
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」に基づく目安で、建物の劣化を防ぎ、マンションの住環境や資産価値を良好に維持するために必要な対策です。
1回目の修繕では、主に外壁や屋上の修繕が行われますが、2回目以降は内部設備や付属部分の修繕も必要になることが多く、規模が拡大します。
とはいえ、大規模修繕の周期やタイミングは、マンションの個別の状況を考慮して柔軟に決定することが大切です。
建物の劣化状況や修繕積立金の状況、住民の意見などを総合的に判断し、最適なタイミングで実施することがポイントとなります。
4.大規模修繕の流れ
次に、大規模修繕の流れを解説します。
- 修繕委員会を結成する
- マンションの劣化状況を調査する
- 修繕工事の計画を立てる
- 施工会社を選定する
- 総会で承認を得る
- 施工会社と契約する
- 住民に対して工事説明会を行う
- 工事開始
- 工事完了
詳しく見ていきましょう。
流れ1.修繕委員会を結成する
まずは、修繕委員会の結成です。
修繕委員会はマンション管理組合員の有志で構成され、工事の準備から完了まで主導的な役割を担います。
主な業務は住民の意見の集約や、工事内容の検討、業者との打ち合わせ、進捗管理などです。
建築や工事に詳しい組合員の知識を活用できるほか、多様な視点を持つ組合員の参加により、多角的な検討が可能になります。
流れ2.マンションの劣化状況を調査する
修繕委員会が発足したら、マンションの劣化状況を調査します。
管理会社や専門のコンサルタント、施工会社に依頼して、共用部を中心とした建物の状態を詳しく診断してもらいましょう。
主な調査対象は、以下のとおりです。
- 外壁のひび割れや剥離
- 防水層の劣化
- 設備の老朽化
- その他の建物の状態
この調査結果は、後の修繕計画立案の基礎となる重要な情報です。
目に見える劣化だけでなく、将来的な問題に発展する可能性のある箇所も見逃さないようにしましょう。
専門家の目を通して建物の状態を正確に把握することで、適切な修繕計画と見積もりを立てることができます。
流れ3.修繕工事の計画を立てる
調査結果に基づいて劣化箇所や必要な工事内容を特定し、修繕計画を策定します。
この段階で、修繕積立金とのバランスを考慮しながら、施工内容を慎重に検討することが重要です。
ただし、設計段階で出される概算費用はあくまで推定であり、実際の工事が進行する中で変更が必要になる場合もあります。
そのため、予期せぬ追加工事に備え、予算に余裕を持たせることが賢明です。
流れ4.施工会社を選定する
次に、施工会社を選定します。
複数の会社から見積りを取り、価格以外にも実績やアフターサポート、経営状況などから総合的に判断しましょう。
また、信頼できる会社を選ぶために、住民とのコミュニケーションが円滑な会社を選定することが重要です。
マンションの大規模修繕は住民が生活する中で行われるため、騒音や安全への配慮も必要になります。
必要に応じて、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。
流れ5.総会で承認を得る
大規模修繕工事の内容や予算、施工会社が決まったら、組合員向けに総会を開催して承認を得る必要があります。
具体的な予算や選定した施工会社について説明し、組合員が理解し納得できるよう丁寧に説明しましょう。
また、大規模修繕の費用には修繕積立金が充てられるため、全員が合意しやすい説明を心がけることが大切です。
流れ6.施工会社と契約する
総会での承認を得た後、施工会社と正式に工事請負契約や工事監理契約を結びます。
契約内容には工事の詳細や予算、工期が含まれるため慎重に確認し、双方が合意したうえで進めることが大切です。
流れ7.住民に対して工事説明会を行う
大規模修繕の前に、住民向けの工事説明会を開催することが重要です。
説明会では、施工会社が工事に関する概要や注意点、詳細なスケジュールや生活への影響について説明します。
特に工事による騒音や臭い、作業員の出入りなど、住民の生活に関わる注意事項を詳しく説明しましょう。
掲示板での告知や各戸への案内配布で周知をし、住民全員の理解と協力を得ることが重要です。
流れ8.工事開始
大規模修繕工事が始まったら、修繕委員会や理事会は進捗状況の継続的な確認が大切です。
定期的な現場確認や施工会社との打ち合わせを通じて、工事の質と進捗状況を管理しましょう。
また、工事中に住民から要望や問題点が寄せられることもあるため、意見を迅速に共有し、必要に応じて対応策を検討します。
安全対策にも留意しながら、施工会社や住民と密にコミュニケーションを取ることで、工事を円滑に進めましょう。
流れ9.工事完了
大規模修繕工事が完了したら竣工検査を行い、契約どおりに工事が実施されたかを確認します。
竣工検査は、施工箇所の仕上がりや不具合がないかを細かくチェックする作業です。
その後、報告書を確認し、竣工図書や保証書を受け取って工事完了となります。
なお修繕工事完了後も、住民とのコミュニケーションを継続し、万が一の不具合にも迅速に対応できる体制を整えておくことが大切です。
5.各工事にかかる期間の目安
大規模修繕において、各工事にかかる期間を把握することは、全体のスケジュール管理において重要です。
ここでは、各工事にかかる期間の目安を見ていきましょう。
- 足場・仮設設備の設置
- 下地補修・シーリング工事・鉄部塗装
- 外壁塗装・防水工事
順番に解説します。
(1)足場・仮設設備の設置
足場や仮設設備の設置には、小規模マンションでは10〜15日、中規模から大規模マンションでは20〜30日が一般的な設置期間です。
足場は建物全体を覆うように設置され、作業員の安全確保や工事の効率化を図る重要なパーツです。
さらに、足場の周りにはメッシュシートが張られ、工事中の材料の飛散や落下を防止します。
仮設設備としては作業員の事務所や資材置き場、工事用掲示板などが含まれ、工事終了後に足場と共に撤去されます。
(2)下地補修・シーリング工事・鉄部塗装
下地補修・シーリング工事・鉄部塗装にかかる期間は、小規模マンションでは約2週間から1ヶ月、中規模から大規模マンションでは約2週間から1ヶ月が一般的です。
まず下地補修工事では、壁や天井のひび割れなどの劣化部分を修復します。
シーリング工事は、外壁の継ぎ目やサッシまわりに充填されている、ゴム状のシーリング材を新しく打ち直す作業です。
そして鉄部塗装では、錆を除去し再塗装を行うことで、耐久性を向上させ錆による劣化を防ぎます。
これらの工程は建物の基礎的な部分を補強し、後の外壁塗装や防水工事の効果を最大限に引き出すために重要です。
(3)外壁塗装・防水工事
マンションの規模別に、外壁塗装と防水工事にかかる一般的な期間をまとめました。
マンションの規模 |
外壁舗装と防水工事にかかる期間 |
小規模 |
外壁塗装:約2~3週間 防水工事:約3日から1週間程度 |
中規模 |
外壁塗装:約3~4週間 防水工事:1週間から2週間程度 |
大規模 |
外壁塗装:約4~6週間 防水工事:約2週間から1か月程度 |
外壁塗装工事では、まず下地補修後に高圧洗浄で汚れを取り除き、仕上げとして塗料を塗り直します。
また、防水工事は屋上やバルコニー、外廊下などの防水機能を回復させ、雨漏りを防ぐために行われます。
外壁塗装と防水工事は、マンションの外観を美しく保ちつつ、建物自体の耐久性を高める重要な工程です。
これらの作業に十分な時間をかけることで、長期的な建物価値の維持につながります。
6.【注意】大規模修繕の期間は伸びることもある
大規模修繕の期間は、予定よりも長引くことがあるため、注意が必要です。
工期延長の原因には、以下のようなものがあります。
- 工事内容の変更や追加
- 安全に関わる問題の発覚
- 天候不良
工期が延びた場合、最も重要なのは迅速な情報共有です。
施工業者と密に連絡を取り、遅れの原因や今後の見通しを正確に把握しましょう。
そして、情報を速やかに住民に伝えることが大切です。
住民の不満を軽減するためにも、事前の周知や工事中の報告を徹底しましょう。
7.大規模修繕にかかる期間を考慮しながら余裕を持って工事を進めましょう
大規模修繕は、マンションの住環境や資産価値を良好に維持するために欠かせないものです。
工事にかかる期間の目安をもとに、計画的に工事の準備や資金の調達などを進めましょう。
また、追加工事や計画の変更、天候不良などが原因で工事期間が想定以上に延びるおそれがあります。
マンション管理組合役員は工事の準備から完了まで、施工業者や住民と密にコミュニケーションを取りながら、円滑に修繕を進めるようにしましょう。
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